「有沙と私 それぞれの壁 ~日本に嫁いだ中国人妻を追って~」
畑祐一郎・福井テレビ(ディレクター、報道記者)の受賞歴。福井に嫁いだ中国人妻を取材し、制作した日中国際結婚の特集ドキュメンタリー番組で、文化庁芸術祭優秀賞に輝いた。このほかFNSドキュメンタリー大賞、ギャラクシー賞 奨励賞、日本放送文化大賞中部・北陸地区作品に選ばれた。
制作意図
日本人男性と結婚する外国人女性の中で、一番多いのが中国人。
毎年1万組を越える日中国際結婚のカップルが誕生している。
福井県にも500人以上の中国人妻が嫁いで来ていると言われている。
彼女たちの多くは、20代。
一方、日本人男性は40代が中心。
「彼女達はなぜ国を越えてまで、日本人男性と結婚するのだろうか?」
ひとりの女性が疑問に思った。
彼女は耿昕(こうきん)。
福井テレビ報道番組部の女性記者
耿昕(こうきん)は、中国人の女性記者である。
北京出身。高校を卒業後、日本に留学した。
現在、30歳。福井テレビの報道番組部のスタッフとして働いている。
あるとき、福井県には、中国人妻が500人以上もいることを知り、一回の見合いで、日本に嫁いできたという彼女たちの取材をはじめる。
番組では、耿昕(こうきん)の目線を通して日中国際結婚の今を浮き彫りにする。
国際環境が大きく変化し続ける今、何が変わろうとしているのか、変わらないものは何なのか。
外交問題でギクシャクする日本と中国。
そんな中で日中国際結婚という民間交流は何をもたらすのか問い掛ける。
日中国際結婚を取材
耿昕(こうきん)が日中国際結婚を知ったのは2年前。
当初、この結婚のあり方に強い疑問と怒りをもって取材を始めた。
「日本人女性と結婚する機会に恵まれないから、お金で中国に花嫁を求める日本人男性。相手のことも良くわからずに、豊かになりたいから嫁いでくる中国人女性」
強い先入観を持ちながら取材を進める中で、耿昕(こうきん)はいろいろな立場の人々に出会う。
結婚3か月で家庭内別居
朝倉有沙さん(中国名:杜国鳳)はトラック運転手の誠二さんと沙織ちゃんとの3人暮らし。
懸命に家事、育児に励む有沙さんだが言葉の壁、習慣の違いは夫婦に様々な問題を引き起こす。
一方、周敏英さんは結婚後わずか3か月で家庭内別居の状態になる。
「日本語が出来ないから?日本料理が出来ないから?」
夫に問いただす周さんだが、離れた夫の心は戻ってはこない。
更に周さんには結婚に破れても中国に戻れない事情があった。
日中国際結婚に絡む多くの人々、様々な事情に直面しながら耿昕(こうきん)は自らの考えを深めていく。
受賞歴一覧
賞 | 部門 | 受賞日 |
---|---|---|
第60回文化庁芸術祭 | 優秀賞 | 2005年12月21日 |
第14回FNSドキュメンタリー大賞 | 優秀賞 | 2005年12月16日 |
第43回ギャラクシー賞 | 奨励賞 | 2005年11月21日 |
第25回地方の時代映像祭 | 審査委員会推賞 | 2005年10月1日 |
第11回平和・協同ジャーナリスト基金 | 奨励賞 | 2005年12月9日 |
第1回日本放送文化大賞 | 中部・北陸地区 準優秀作品 | 2005年8月19日 |
文化庁芸術祭優秀賞(ドキュメンタリーの部)の総評
言葉の壁をはじめとする、さまざまな悩みに直面しながら、必死に生きる中国人妻の姿を、同じ中国人女性が取材していくというユニークな手法で描き、中国人女性の国際結婚の実態や、複雑なその背景を、リアルに浮かび上がらせた力作。