CNNの独壇場

24時間ニュースは、それまで16年間、CNNの独壇場だった。他社の追随を許さなかった。CNNは、テッド・ターナー氏が創設した。

1995年ディズニーの傘下に入ったABCも、過去に何度か参入を計画した。しかし、断念に追い込まれた。「少なくとも初めの5年間で4億ドルの損、また初めの10年間は何のもうけもない」(ABC)というのが理由だった。つまり採算があわないのだ。

5600万世帯の加入

CNNの成功の秘けつは、全米5600万世帯以上に上る加入者のネットだ。これが採算性を維持させていた。

当時、CNNの1995年の収入は7億6500万ドルだった。このうち広告収入は3億8000万ドル。残りはCATV会社から得る放映料金だった。

加入者1人当たり月間35セントの収入を得ている計算だった。


朝9時から夜7時までがニュースの生番組

にもかかわらず、マイクロソフトとNBCは折半出資会社「MSNBC」を設立した。MSNBCは当面2000万世帯の加入を想定していた。

朝9時から夜7時までがニュースの生番組だった。夜7時以降は、トム・ブロコー氏らNBCの著名キャスターがインタビュー番組を担当した。

スタッフはテレビ担当が300人強、インターネット要員が100人

また、CNNの討論番組などで名前の売れた大物ジャーナリストをスカウトした。その費用に1億ドルを投資したという。

スタッフはテレビ担当が300人強、インターネット要員が100人。地上波の民放テレビ局「CBS」やタイムなどから引き抜いた。

さらに、マイクロソフトは、インターネットニュース部門を自社内に置き、独自の記者を100人以上養成していく計画を立てていた。

海外の取材網については、系列を含めて世界中に600以上の取材拠点を持つCNNより劣っていた。

クリントン大統領の単独会見

開局初日の1996年7月15日夜は、人気ニュースキャスターのトム・ブロコー氏によるクリントン大統領の単独会見を放映した。


NBCのオリンピック放映権

NBCはアトランタ五輪の米国内の独占放映権を握る。NBCの番組(コンテンツ)が武器になる。MSNBCは自由に番組を編成出来るのが強みとされた。

NBCのボブ・ライト社長は記者会見で「われわれも最初から儲かるとは思っていない」と語った。

動画

MSNBCの初日の放送(1996年7月15日)


マードックのFOX

ルパート・マードック氏率いる豪ニューズ・グループも1996年10月、アメリカでニュース専門放送局「FOX(フォックス)ニュース」を立ち上げた。

ニューズは傘下に、「ニューヨーク・ポスト」「ロンドン・タイムス」「オーストラリアン」など米、欧、豪に新聞社を抱えていた。6500人以上の記者がFOXWIREと呼ばれる通信ネットを形成していた。

衛星放送を使ってニュースを供給する方針を打ち出した。